小耳症治療『永田法』を確立した医師(令和4年1月逝去)
永田 悟
satoru Nagata, M.D
永田医師の生前のごあいさつ文と経歴を紹介させていただきます。
ごあいさつ
私は長崎市に生まれ育ちました。
広島に次いで長崎は昭和20年8月9日に原爆を投下されました。この原爆一発のため瞬間的に命を奪われた人々は11万人を超えます。
私は爆心地に最も近い城山小学校に通っていました。
毎年8月9日の原爆投下時間になると、校庭で黙祷(もくとう)を捧げます。この校庭で一瞬にして1,000人もの児童が整列して伏せたまま白骨化していた事や、原爆の凄まじい威力・放射能による2次的被害など様々な話を先生からうかがっていました。私は子供心に「そのとき長崎で命の助かった人はラッキーだなぁ」と単純に思っていました。
ところが、根底から揺り動かされる事実を聞かされました。
原爆から発せられた灼熱の爆風は、人々の肌を焼き、重度熱傷を負った人々は、応急手当の処置により長期間の苦しみに耐え続けたのち、ようやく命を取り留めました。
「これで治療が終わったよ」と聞かされた患者さんたちは、耳や鼻、眉・まぶた・毛など無くなっている、変わり果てた自分の姿を鏡の中に見て絶望し、やがてその現実に、もはや生きる希望を失い自らの命を絶った若い女性が6,000名もいたと聞かされました。この若い女性たちを「原爆乙女」と呼んでいます。
「人は外見ではなく、心の中が重要だ」と聞かされていたのに、生きる力を失う程の外観という状態があるのだな、と思い知らされました。
それからは私は、「無くなった耳・鼻・眉・まぶた・毛も医学的に再建できれば、死なずにすんだのに」と強く考えるようになりました。
小学5年当時の私を強く揺り動かしたこの話は、私を形成外科医へと導く事になりました。
体表の中で最も複雑な形をしている耳は形成外科分野の中で、最も困難な再建手術と言われています。
現在、耳の再建手術を2,000例以上手がけており、その他の再建分野も幅広くおこなっています。
最近では他施設で、すでに小耳症手術を受けたものの不幸な結果となった耳介の作り直し手術が永田小耳症形成外科クリニックにおいて増加しています。
当院には海外から医師、看護師が見学、研修に訪れています。
※この文章は永田悟医師が令和4年1月以前に執筆されました。
資格 | 鳥取大学医学部卒業(1978年) 医学博士 |
学会会員 | 日本形成外科学会 日本頭蓋顎顔面外科学会 イギリス形成外科学会誌(BJPS)Editorial Adviseory Boad Member International Conference on Advanced Digital Technologyin Head and Neck Reconstruction : Future Directions・Scientific Advisory Committee アメリカ合衆国形成外科学会(Corresponding Member) フランス形成外科学会(Foreign Member) ヨーロッパ形成外科学会(Foreign Member) |
称号 | アルバータ大学外科(カナダ) Adjunct Professor アルバータ大学 COMORU 形成外科(カナダ) Visiting Professor カルフォルニア州立大学アーバイン校形成外科(米国) Visiting Professor ロッテルダム大学形成外科(オランダ) Visiting Professor メキシコゼネラル病院形成外科(メキシコ) Professor ミラノ大学耳鼻咽喉科(イタリア) Visiting Professor シックチルドレン病院形成外科(カナダ) Visiting Professor セントジョセフヘルスセンター形成外科(カナダ) Visiting Professor 国際頭蓋顎顔面唇裂口蓋裂センター(米国) Visiting Professor |
専門分野 | 小耳症に対する全耳介再建術および再々建術(1,000症例以上) 埋没耳・たち耳・外傷性耳介欠損・スタール耳・ピアス後の耳垂ケロイド・副耳・柔道耳・耳前瘻孔 レックリングハウゼン氏病 乳癌術後乳房欠損に対する乳房再建術 乳輪・乳頭再建術 鼻欠損に対する鼻再建術(外傷・癌・腫瘍) 唇裂、口蓋裂手術・唇裂術後変形修正術 多合指症 熱傷、その他形成外科領域一般 陥入爪 |
論文 | アメリカ形成外科学会誌 イギリス形成外科学会誌 |
学会発表論文などの履歴 | フランス形成外科学会誌 アメリカ発行の形成外科テキストなど、多数 ・招待講演、教育用デモンストレーション手術、論文(英文 主著 共著)など ※PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。 プラグインは以下のURLからダウンロードできます。 https://get.adobe.com/jp/reader/ |
教育
小耳症に対する耳介再建術は、永田法として世界のテキストとなり、最先端のスタンダード術式となりました。
アメリカ形成外科学会が発行した形成外科医のためのテキストブック最新版における小耳症治療分野はハーバード大学のエリクソン教授から永田小耳症形成外科クリニック院長の永田悟が依頼を受けて執筆しております(上の論文をクリックし参照)。
アジアでは長夷記念病院形成外科からのfellowship programとしてズン・チャン・チェン医師が台湾より留学し、耳介再建を学んで帰国し、台湾の小耳症患者さんの治療を永田法で行っています。
マレーシアではチャールズ・リー医師、韓国ではチュール・パック医師も永田法を行っています。
北米ではシックチルドレン病院(カナダ)でもデビット・フィッシャー、レイラ・キャスライ医師が、アルバータ大学(カナダ)ではゴールド・ウィルキス教授が永田法を学び耳介再建を行っています。
ヨーロッパではビゼット病院(パリ)にてフランソワーズ・フィアミン医師、バーミンガム大学病院(イギリス)ではルックイ・ヤップ医師。
グレートオズモント子供病院(ロンドン)ではデイビット・ガルト医師、
ドイツではラルフ・シーゲルト教授、
ロッテルダム大学(オランダ)マイケル・バンドレーガー医師、
ベローナ国立病院(イタリア)ピエール・ルイジ・ジベリ医師が永田法を行っています。
中米ではメキシコのフェルナンド・オーティーズ・モナステリオ教授が永田法を行っています。
ニュージーランドからシェリー・モコ医師、その他、毎年多数の留学、見学、研修希望者が控えております。
永田小耳症形成外科クリニックには頻繁に海外各国からの小耳症治療を専門とする医師が訪れています。欧米をはじめとする各国の形成外科学会や国際形成外科学会などからの要請を受け招待講演や形成外科医教育目的のインストラクショナルコースや教育用デモンストレーション手術などを頻繁に行って来ました。(上に前述した招待講演をクリックし参照)
イギリス形成外科学会が発行する形成外科学会誌においては、Editorial Adovisory Board Memberを行っています。
永田悟医師の記事
小耳症手術・再建耳介のプロポーション正確度判定
理想の耳のプロポーションの形態」を分析し、どうあるべきかについて
続きを読むとけない耳をつくるには
術後5年、10年と経過していくうちに、再建された耳介が委縮変形をしてしまっては、元も子もありません。
続きを読む胸の痛み・変形のない小耳症手術
従来の小耳症手術後は、胸部の痛みで術後1週間ほど痛くて患者さんはベッドに寝たままだった。ところが、永田小耳症形成外科クリニックでは、患者さんは小耳症の手術の翌日から自ら歩いてスムーズにトイレへ行っている。
続きを読む耳介軟骨再生の基礎研究
ヒトのips細胞から作った軟骨で、ヒトの耳の形を作り、動物の皮下でもきちんと維持させることに、東京大と京都大の研究チームが成功した。
続きを読む海外医師との交流
永田法による小耳症手術を学ぶために
多数の海外医師が手術見学に訪れていました。
海外での永田医師の活動や海外医師たちとの交流記録を掲載いたします。
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