融けない耳をつくるには

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小耳症手術は、肋軟骨移植を伴う特殊な手術です。
術後5年、10年と経過していくうちに、再建された耳介が委縮変形をしてしまっては、元も子もありません。

第1回目の肋軟骨移植術が終了し半年を経過した耳介挙上の前においては、再建耳介の全周囲からの体液で栄養されて移植肋軟骨細胞は生きています。

しかしながら、耳介挙上の手術操作により、側頭部から耳介後方が分離されると、その直後から耳介前方から流れ込むのみの体液の血行に頼る事になり、移植肋軟骨周囲を取り巻く体液循環血行が減少したままとなってしまいます。従来法であるタンザー法やブレント法は分離した耳介後面に植皮を行うのみであったため、耳が正常な角度に建てられないだけに留まらず、植皮部が術後収縮し、その張力の影響が再建耳介耳の表にまで影響を及ぼして耳介の輪郭にも悪影響を及ぼします。

そのためさらに血行が減少してしまうので移植した肋軟骨細胞を生かし続ける事ができなくなり5年10年と経過するうちに次第に移植肋軟骨が吸収されてしまう運命となってしまうのです。
以前に他院で、タンザー法による手術を行われたものの移植肋軟骨の吸収により委縮変形を起こして不幸な結果となり当院で再々建手術を行った症例の術前状態「参照→再々建手術①再々建手術②再々建手術③」を見ると移植肋軟骨吸収がいかに深刻な事かが良く理解できます。

では、移植肋軟骨が吸収を起こさず、尚且つ再建耳介が正常な角度に建てられるためにはどのような手術を行ったらよいのでしょうか?

側頭部より耳介後方分離を行い、耳介と側頭部の間に耳を立てるための支えとして厚さ14ミリの半月状の肋軟骨を新たに作成し耳の後方に移植して耳を正常な30度の角度に建てた後肋軟骨細胞を生かすために、側頭部から挙上したTPFすなわち、「浅側頭動静脈を含む血行が最も豊富な膜」で移植肋軟骨のみならず耳介後面全体を被覆します。
この方法では、術後の皮膚移植部の収縮を起こさないという特性を持っています。

結果として、再建耳介後方から体液循環血行を格段に増強することができるので再建耳介は、移植肋軟骨の吸収が起きなくなります。この方法と原理理論は、1992年から1993年にかけてアメリカ形成外科学会誌に5論文を投稿し、永田法として掲載されました。それ以来、永田法は次第に世界中に広まり、アメリカ形成外科学会が発行した形成外科の教科書にもなっています。

毎年秋に行われるアメリカ形成外科学会において筆者は本年も小耳症のインストラショナルコースを行って小耳症治療の指導も行ってきました。ただし、手術手技そのものは非常に困難を極めるため、形成外科医にとっては、長期の修練経験を要する分野となっています。

融けない耳

融けない耳

融けない耳

第1回目の3次元肋軟骨移植術を、せっかく永田法に準じて行ったものの第2回目の耳立て手術において手術法が困難で、長時間かかりすぎるからと言って安易にTPFを使用しない簡略化した術式に変更すると、その結果再建された耳介は、術後1年ほどは、その形態を保っていても10年後には移植肋軟骨が吸収による融解を引き起こし再建耳介に委縮変形を生じた、患者さんにとっては、深刻な状態に陥ってしまう事となります。
困難でも、血行の良好な耳介形成のために修練を続けることが形成外科医の使命と考えています。

永田 悟

※この文章は生前の永田悟医師が執筆いたしました。永田法の参考に掲載いたします。

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永田法術式やそれ以外の手術法との違いを解説

小耳症(永田法)の軌跡