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ローヘアーラインを伴う小耳症の耳介再建
ローヘアーライン「髪の毛が正常よりも下まで生えている状態、言い換えると耳介が存在すべき場所にまで髪の毛が生えている状態」を伴う小耳症の耳介再建術は、多くの形成外科医にとって、挑戦的「チャレンジ」な手術となっている。なぜならば、従来法では、ローヘアーラインを伴う小耳症症例に正常な場所に耳介再建を行うと、再建した耳介から髪の毛が生えたり、また、髪の毛が生えないように、わざと、ヘアーラインから逃れて再建した耳介は、正常な場所よりも下であったり、前であったりと、多くの術後合併症を伴う症例が頻発し、永田小耳症形成外科クリニックへ再々建手術を求めて来院されている。このホームページでの再々建した症例を参照していただけると深く理解できる。永田法では、これらの従来法では不可能だったローヘアーラインを伴う小耳症の諸問題点を解決し、髪の毛が生えない耳介を正常な場所に再建することができるようになった。すなわち、第1回目の肋軟骨移植時には、TPFとUDSTS「頭皮分層皮膚移植」とを用いる事で毛根部を切除しても移植肋軟骨を生かすことができるので、ローヘアーラインを伴う小耳症の症例でも、正常な場所に髪の毛が生えない耳介を再建することができるようになった。第2回目手術においては、通常の小耳症で用いるTPFの代わりにDTFを用いて耳輪、耳介後面、移植肋軟骨ブロック、側頭部、乳突洞部を被覆し、その上に頭皮分層皮膚「UDSTS」移植を行って耳介を正常な角度に建てることがローヘアーラインを合併する小耳症でも可能となっている。結果として、永田法では科学的に再建した耳介の全面も後面も血行が良好な耳介再建が行われるため、術後長期を経過しても移植された肋軟骨が従来法のように吸収変形を起こす事が無くなっている。
手術前
手術前
手術中(50%ローへアーライン)
手術中(50%ローへアーライン)
第2ステージ手術後
第2ステージ手術後
このブログの写真は小耳症治療をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。
■小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺 浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良 感染、移植軟骨の露出 気胸 術後肺炎 縫合不全 ハゲ 床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。
第1回目手術・3次元肋軟骨フレームの作成
図1:小耳症と同側の第6、7、8そして9番の肋軟骨を採取する。図2:採取した4本の肋軟骨。これらの肋軟骨から、メスと彫刻刀を用いて耳珠、ベースフレーム、耳輪脚と耳輪、上行脚と下行脚および対輪、を作成する。ベースフレームは、第6、第7番の肋軟骨から2個のパーツを作成し、38ゲージステンレスワイヤーを用いて6か所固定し作成する。図3:ベースフレームに第8番肋軟骨から作成した耳輪脚、耳輪のパーツの耳輪脚先端をベースフレーム8の中央で裏側に38ゲージワイヤーで2か所固定する。図4:耳輪の部分をベースフレームの上に乗せて、曲げながら3mmおきにワイヤー固定する。図5:上行脚、下行脚、対輪のパーツをベースフレームにワイヤー固定する。図6:耳珠のパーツをベースフレームに固定する。図7:耳甲介部をベースフレームの裏側にワイヤー固定すると3次元肋軟骨フレームが完成する。
ローヘアーラインを伴う小耳症の耳介再建術・第1回目手術
ローヘアーラインを伴う小耳症の耳介再建手術を図1から図14に示す。図1:ローヘアーラインを伴う小耳症の術前の例を示す。図2:耳介が存在すべき場所にまで低く髪の毛が生えている。図3と4:ローヘアーラインを伴う小耳症の手術デザインを示す。また、浅側頭動脈とその枝の走行を示す。図5:切開線を示す。図6、7、8、9と10:皮膚切開後、1枚の連続した頭皮分層皮、膚及び全層皮膚を採取挙上し、またTPFを挙上する。図11:髪の毛が生えない耳介を再建するために、耳介が存在すべき場所の毛根部分を切除する。 図12:作成した3次元肋軟骨フレームを耳介が存在すべき場所へ移植する。図13:3次元肋軟骨フレームの下方は、皮弁で被覆し、皮弁では被覆できない上方の露出部をTPFで被覆する。図14:TPFで被覆したその上に1枚の連続した頭皮分層皮膚及び全層皮膚で被覆する。
ローヘアーラインを伴う小耳症の第2回目手術・耳立て手術
第1回目の肋軟骨移植術後6か月を経過してから第2回目の耳立て手術を行う。ローヘアーラインを伴う小耳症の耳立て手術のイラスト。図1:耳立て手術の手術デザイン。耳介後方の側頭部から頭皮分層皮膚を採取する。又、再建耳介を側頭部から切離挙上するために耳介周囲を切開する。側頭部のジグザグ切開「第1回目手術と同じ切開線」により、DTFを挙上する。図2と5:頭皮分層皮膚を側頭部から採取し、頭皮をジグザグに切開しDTFを挙上する。図3と4:15番メスで頭皮分層皮膚をスピンドル型に採皮する。図6:DTFを挙上する。図7:再建耳介を側頭部から剥離挙上際に、耳介周囲より4 mm外側を切開し、図8:頭髪毛根を含まないように15番メスで頭皮分層皮膚を挙上する。図9:再建耳介を側頭部から剥離する。図10:耳輪周囲の毛根部を切除する。図11:側頭部、乳突洞部の皮下を剥離する。DTFは皮下トンネル下を通して再建耳介まで移動し、側頭部皮膚は縫合閉鎖する。図13、14:第4番、第5番の肋軟骨を採取する。図15、16、17:肋軟骨ブロックを作成する。まず、肋軟骨のベースフレームを作成し、その上に別の肋軟骨を半月状になるように2個組み合わせて2段重ねとする。ベースフレームと合わせると3個のパーツの組み合わせとなることが多い。38ゲージのステンレスワイヤーで20か所固定し強作成した肋軟骨ブロックは、下から見るとⅬ字をした形状にする。厚さ14 mmの肋軟骨ブロックを作成するには、2本の肋軟骨採取が必要。1本だけの肋軟骨を削って一刀彫でこれを作成しようとしても、厚さは7 mmほどにしか作成できないので左右対称に耳介を立てることは絶対不可能となるから要注意。図18:肋軟骨ブロックを耳介の後面と、側頭部および乳突洞部の軟部組織に4-0白ナイロンを用いて密に縫合固定する。図19:DTFで、耳輪の頂点、耳介後面、移植肋軟骨ブロック、側頭部、乳突胴部まで広く被覆する。図20:余った肋軟骨は米粒大に細かく切り肋軟骨膜の中に戻して肋軟骨膜を縫合し肋軟骨再生を促し胸郭変形が起きないようにして、胸部切開部を縫合閉鎖する。図21:皮下剥離していた側頭部乳、乳突洞部皮膚は、上からと下からと矢印のように引き寄せて皮膚欠損部を狭くし、髪の毛の中で余った皮膚をドッグイヤー修正する。図22:DTFの上に頭皮分層皮膚を移植し6-0黒ナイロンで3 mmおきに縫合する。図23:4-0ナイロンで、計8針タイオーバー用の糸をかけタイオーバー固定を行う。翌日タイオーバーを抜去し、10日後に全抜糸を行う。図24:耳介を保護するため暑さ2 cmのレストンスポンジを再建耳介周囲に当てる。図25:ガーゼを当てネットをかぶせて手術終了。
このブログの写真は小耳症治療をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。
■小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺 浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良 感染、移植軟骨の露出 気胸 術後肺炎 縫合不全 ハゲ 床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。
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