小耳症(左耳)他院術後 再々再々建術 2025/6/17
K.Mさん 成人女性の他院術後 再々再々建手術記録
施設名 | 担当医師 |
---|---|
成田富里徳洲会病院 | 丸山成一 (ヒルズ美容クリニック) |
中島康代 (成田富里徳洲会病院) |
解説
この患者様は他院にて、10歳頃から計3回の小耳症手術を受けておられます(2回目の手術がうまくいかず、3回目を実施)。術式の詳細は不明です。
成人後は相談先や受診先が分からずお悩みのなか、当院のホームページをご覧になり、ご相談くださいました。
他院での術後も不便さが残っており、マスクは耳の上部2/3ほどにしか掛からず外れやすい、眼鏡は左右の耳の高さが異なるため水平にかけることができない、耳の外側や背面から毛の処理が必要になる、などの症状が見られました。
また、耳の背面や耳たぶの上あたりからワイヤー状のものが露出し、軽度の出血や痛みを伴うことがあり、他院にて処置を受けたものの、その後も同部位に出血・腫れ・化膿を繰り返すことがあるとのことでした。
これらの症状を改善するべく、このたび成田富里徳洲会病院にて再々再々建術を行いました。

手術と経過
STEP 01





再々再々建術前の状態です。左右の耳の角度が異なっています。
STEP 02



再々再々建術のデザインです。
頭頂部から見た左耳は角度が足りていない状態です。
また、耳の位置が前傾しすぎています。
STEP 03

術前に血管造影CTを行い、浅側頭動脈の評価を行いました。
永田法では本来、浅側頭動脈を茎とする血行のよい浅側頭筋膜(TPF)を使用します。しかし、写真左の黄色の点線部分にあるはずの血管がなかったことから幼少時の手術で浅側頭筋膜が切断されたものと思われます。(参考:写真右の右側面に見られる血管と同様のもの)。
このため後頭動脈を栄養血管とする筋膜弁を使用する計画となりました。

写真右:術中・実際の後頭動脈の位置
黄色の丸で囲んだ部分は後頭動脈の枝の部分です。
STEP 04

肋軟骨は他院での耳介形成術により右側胸部か肋軟骨が採取されているため、左側の肋軟骨を採取します(黒いマーカー位置より採取)。他院にて行った術後の傷跡が右側胸部下に残っています(黄色で囲った部分)。


写真中央:作成した永田法の3次元肋軟骨フレーム
写真右:永田法の3次元肋軟骨フレーム型紙
写真左側に写っている肋軟骨フレームは、他施設で挿入されたものです。
写真中央は、永田法の型紙を基に作成した新しい3次元肋軟骨フレームで、健側(右耳)の形状に合わせて細かな調整を行いました。
今回の手術では、他施設で挿入されていたフレームを取り出し、新たに作成した肋軟骨フレームと入れ替えを行いました。
成人の肋軟骨は硬いため、通常の手術よりも固定方法や削り方などを工夫して行っています。
STEP 05

後頭動脈を栄養血管とする筋膜弁を、頭皮の下に通して移動させます。

作成した肋軟骨フレームを挿入し、その上に皮弁を折りたたむように覆いました。
STEP 06

筋膜弁で被膜した部分に、頭皮から採取した皮膚(頭皮分層皮膚)を植皮しました。
STEP 07

吸引をかけると輪郭が出ているのがわかります。
STEP 08

輪郭が出るようにボルスター固定を行っています。
この状態ではまだ耳は立っていないため、次の手術で、耳介挙上術を行う必要があります。
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今回の手術の術後合併症
■重篤な合併症
顔面神経や血管の走行に異常を認めることが多く、手術によって顔面神経麻痺や皮膚壊死を起こすことがあります。
また軟骨の採取部位では気胸・血胸・心タンポナーデの可能性があります。
■その他の合併症
①皮弁の生着不良・壊死
②感染(MRSAなど)、移植軟骨の露出
③糸やワイヤーの露出
④傷跡が目立つ
⑤薄毛・脱毛
⑥長時間同じ体位による環軸椎亜脱臼{第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)}
⑦長時間同じ体位による褥瘡
⑧その他、予測不可能な合併症
以上のような合併症が起こった場合は、再手術や処置を行う場合もありますが、不可逆的な状態もありえますのでご了承ください。
※ここに供覧した症例は、小耳症の手術をご理解いただくためのものです。症例により結果は異なります。
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