耳垂残存型小耳症(左耳)の耳立て手術 2025/2/18

施設名担当医師
成田富里徳洲会病院丸山成一
(ヒルズ美容クリニック)  
中島康代
(成田富里徳洲会病院)

解説

最初の状態

昨年2月に成田富里徳洲会病院で、1回目肋軟骨移植術を行った耳垂残存型(じすいざんぞんがた)小耳症の患者様です。耳垂残存型小耳症は、耳垂(耳たぶ)だけが形成されているタイプの小耳症です。耳珠や耳介全体を新たに作るケースが多く、耳介全体の再建が必要となります。再建範囲が広いほど皮膚の使用量も増え、手術の難易度は高くなります。

永田法小耳症では、小耳症は大きく5つのタイプに分けます
1回目の手術後1年が経過(2回目手術前の状態)

1回目手術(肋軟骨移植術)では肋軟骨フレームを挿入し、耳の輪郭を作りました。写真は、手術後1年が経過した状態ですが、耳の溝はしっかりでており、腫れも赤みもありません。この状態ではまだ耳は立っていません。

1回目手術報告ブログはこちら→『耳垂残存型小耳症(左耳)の肋軟骨移植術 2024/2/20』

1回目手術から半年以上が経過し、2025年2月に2回目手術で耳立て(耳介挙上術)を行いました。

2回目の手術では、耳裏に肋軟骨ブロックを挿入し、耳を立てます。

永田法小耳症手術は、このように1回目の手術で耳の輪郭を作り(肋軟骨移植術)、2回目の手術で耳を立てる(耳介挙上術)順番で行います。

2回目手術後8カ月経過

2回目手術後、8カ月が経過した状態です。耳は後戻りすることなくしっかり立っており、耳の溝も保たれています。

手術のため剃った髪の毛も、問題なく生えており、頭皮の傷跡も目立ちません。

手術と経過

2回目手術前(側面から見た状態)
2回目手術前(側面から見た状態)
2回目手術前(背面から見た状態)

耳介挙上術(耳立て手術)の手術前の状態です。

デザイン

耳介挙上術のデザインです。

術中

浅側頭筋膜(TPF)を挙上しています。

肋軟骨ブロックを耳裏に挿入して浅側頭筋膜(TPF)でカバーします。

挙上した耳が倒れてこないように、肋軟骨ブロックは下面を幅広にしています。

2回目手術(耳立て)直後

カバーしたTPFの上に、頭皮から採取した皮膚(頭皮分層皮膚)を移植します。

2回目手術(耳立て)直後
2回目手術(耳立て)直後

耳はしっかり立っています。

腫れや赤みは時間の経過とともに落ち着いていきます。

2回目手術後8カ月経過(側面から見た状態)

2回目手術後、8カ月の状態です。

耳の角度は保たれています。

2回目手術後8カ月経過(斜めから見た状態)
2回目手術後8カ月経過(正面から見た状態)
2回目手術後8カ月経過(背面から見た状態)
マスク装着(側面から見た状態)

マスクもしっかり掛けられています。

マスク装着(斜めから見た状態)
マスク装着(正面から見た状態)
右耳(折れ耳術後1年経過)

この患者様は右耳が「折れ耳」で、昨年9月に折れ耳の形成術を行っています。折れ耳は、耳の上部が前に折れ曲がっている状態です。手術ブログはこちら→「折れ耳(右耳)の耳介形成術 2024/9/6」

マスクは左右均等に掛けられており、不自然さはありません。

この患者様の全ての手術記録 → 


今回の手術の術後合併症
■重篤な合併症
顔面神経や血管の走行に異常を認めることが多く、手術によって顔面神経麻痺や皮膚壊死を起こすことがあります。
また軟骨の採取部位では気胸・血胸・心タンポナーデの可能性があります。
■その他の合併症
①皮弁の生着不良・壊死
②感染(MRSAなど)、移植軟骨の露出

③糸やワイヤーの露出
傷跡が目立つ
薄毛・脱毛
長時間同じ体位による環軸椎亜脱臼{第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)}
長時間同じ体位による褥瘡
⑧その他、予測不可能な合併症
以上のような合併症が起こった場合は、再手術や処置を行う場合もありますが、不可逆的な状態もありえますのでご了承ください。

※ここに供覧した症例は、小耳症の手術をご理解いただくためのものです。症例により結果は異なります。

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