両側小耳症(ローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)の左耳立て手術 2025/2/4

施設名担当医師
成田富里徳洲会病院丸山成一
(ヒルズ美容クリニック)  
中島康代
(成田富里徳洲会病院)

解説

最初の状態(右耳)最初の状態(左耳)
最初の状態(左耳)
両側小耳症(ローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)最初の状態(右耳)
最初の状態(右耳)

トリチャーコリンズ症候群を伴う両側小耳症で、左右ともにローヘアーライン(頭髪低位)を伴う耳垂残存型小耳症の患者様です。両側小耳症の場合、手術は計4回行われます。

この患者様は昨年の6月に左耳の肋軟骨移植術を、11月に右耳の肋軟骨移植術を終えました。

最初の状態(左耳)
最初の状態(左耳)
1回目の手術後7.5カ月経過(耳立て手術前の状態)
1回目の手術後7.5カ月経過(耳立て手術前の状態)

左耳の最初の状態(ローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)から、1回目肋軟骨移植術の術後7.5カ月が経過した状態です。今回の手術では、左耳の耳介挙上術(耳立て手術)を行いました。

手術と経過

耳介挙上術の術前 左耳を側面から見た状態
耳介挙上術の術前 左耳を側面から見た状態
耳介挙上術の術前 左耳を斜めから見た状態
耳介挙上術の術前 左耳を斜めから見た状態
耳介挙上術の術前 背面から見た状態
耳介挙上術の術前 背面から見た状態
肋軟骨移植術から3カ月が経過した右耳の状態
肋軟骨移植術から3カ月が経過した右耳の状態

両側ともローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症の耳立て手術前の状態です。

手術デザイン
手術デザイン
手術デザイン
手術デザイン

ローヘアーラインの場合、従来の方法では1回目の手術から浅側頭筋膜(以下、TPF)を使用しフレームを覆いその上に植皮します。
しかし、1回目でTPFを使用すると肋軟骨フレームを覆う皮膚が菲薄化(※)する可能性があるため、あえて1回目では使用していません。2回目の挙上時に以下の方法でTPFで覆って再建する方法を採用しています。

この患者様の場合も、1回目の手術ではTPFを使用せず、今回の手術でTPFを用いました。立てただけですと耳輪部分に毛包が残り、毛が生えます。

このため、今回の耳介挙上術(耳立て手術)で毛根を処理しました。

毛根の処理
毛根の処理

毛根の処理は採皮のテクニックを応用しています。

※菲薄化(ひはくか):肌の厚みが薄くなること

頭皮分層皮膚を採取し浅側頭筋膜(TPF)を挙上
術中

頭皮分層皮膚を採取しています。

浅側頭筋膜(TPF)を挙上しています。

再建された左耳
手術直後
再建された左耳の後ろから見た角度
手術直後の耳裏

手術直後の状態です。

再建した直後の左耳の角度
手術直後

再建した耳介はしっかり立っています。

次回は右耳の耳介挙上術(耳立て手術)を行います。

今回の手術の術後合併症
■重篤な合併症
顔面神経や血管の走行に異常を認めることが多く、手術によって顔面神経麻痺や皮膚壊死を起こすことがあります。
また軟骨の採取部位では気胸・血胸・心タンポナーデの可能性があります。
■その他の合併症
①皮弁の生着不良・壊死
②感染(MRSAなど)、移植軟骨の露出

③糸やワイヤーの露出
傷跡が目立つ
薄毛・脱毛
長時間同じ体位による環軸椎亜脱臼{第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)}
長時間同じ体位による褥瘡
⑧その他、予測不可能な合併症
以上のような合併症が起こった場合は、再手術や処置を行う場合もありますが、不可逆的な状態もありえますのでご了承ください。

※ここに供覧した症例は、小耳症の手術をご理解いただくためのものです。症例により結果は異なります。

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