両側小耳症(右ローへアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)の右肋軟骨移植術 2024/11/5

M.Y君手術時11歳男児の右肋軟骨移植・2回目手術記録

施設名担当医師
成田富里徳洲会病院丸山成一
(ヒルズ美容クリニック)  
中島康代
(成田富里徳洲会病院)

解説

1回目手術前の左耳(耳垂残存型小耳症)
1回目手術前の左耳(耳垂残存型小耳症)
1回目手術前の右耳(ローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)
1回目手術前の右耳(ローヘアーラインを伴う耳垂残存型小耳症)
1回目肋軟骨後の左耳の状態

トリチャーコリンズ症候群を伴う両側小耳症で、右側がローヘアーライン(頭髪低位)を伴う耳垂残存型小耳症の患者様です。両側小耳症の場合、手術は計4回行われます。

今年の6月に初回手術、左耳の肋軟骨移植術を行いました。写真の左耳が、術後4.5カ月が経過した状態です。

今回は、右耳の肋軟骨移植術を行いました。

手術と経過

術前の右耳の状態
術前の右耳の状態
正面から見た状態
正面から見た状態

肋軟骨移植のデザイン
肋軟骨移植のデザイン
肋軟骨移植のデザイン
デザイン

肋軟骨移植術の手術デザインです。

ローヘアーラインを伴う小耳症のため、デザインに示す通り、本来、耳が存在するべき場所にまで髪の毛が下がって生えているのが分かります。

皮弁形成を行いました
術中
すべての遺残耳介軟骨を摘出し、皮下ポケットを作成
術中

皮弁形成を行いました。

  • 耳垂前面皮弁
  • 耳垂後面皮弁
  • 乳突洞部皮弁
  • 耳珠用皮弁

すべての遺残耳介軟骨を摘出し、皮下ポケットを作成しました。

ローヘアーラインの場合、従来の方法では1回目から浅側頭筋膜(以下、TPF)を使用します。しかしTPFで1回目をつくると菲薄化(※)するため、あえて1回目から使わず、2回目の挙上の時にTPFで覆って再建することにします。そうすると耳介部分の毛が生えますが、2回目の耳立て手術の時に毛根を処理することにしています。

※菲薄化(ひはくか):肌の厚みが薄くなること

左:永田法の紙型 右:3次元肋軟骨フレーム
左:永田法の紙型 右:3次元肋軟骨フレーム

3次元肋軟骨フレームを作成し、皮下ポケットへ移植して再建します。

術直後の状態
術直後の状態
術直後の状態

ボルスター縫合固定
ボルスター縫合固定

ボルスター縫合固定を行って手術終了です。

今回の手術の術後合併症
■重篤な合併症
顔面神経や血管の走行に異常を認めることが多く、手術によって顔面神経麻痺や皮膚壊死を起こすことがあります。
また軟骨の採取部位では気胸・血胸・心タンポナーデの可能性があります。
■その他の合併症
①皮弁の生着不良・壊死
②感染(MRSAなど)、移植軟骨の露出

③糸やワイヤーの露出
傷跡が目立つ
薄毛・脱毛
長時間同じ体位による環軸椎亜脱臼{第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)}
長時間同じ体位による褥瘡
⑧その他、予測不可能な合併症
以上のような合併症が起こった場合は、再手術や処置を行う場合もありますが、不可逆的な状態もありえますのでご了承ください。

※ここに供覧した症例は、小耳症の手術をご理解いただくためのものです。症例により結果は異なります。

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