永田法の概要
要約
- 小耳症は胎児期初期に耳介発育が不完全な結果として発生する先天異常として知られている疾患である。
- 片側の先天性耳介形態異常に対する耳介再建手術は、耳介欠損の程度による手術法が選択される。
- 耳介の先天異常は、臨床的に分類される。
〔1〕耳垂残存型小耳症 〔2〕小耳甲介型小耳症 〔3〕耳甲介型小耳症 〔4〕無耳症 〔5-8〕〔1〕~〔4〕それぞれにローヘアーライン(耳のあるべき位置が髪で覆われている)を合併する場合 - 耳介を再建する形成外科医は、耳介の3次元形態構造の特徴を完全に理解しておくことが非常に重要である。
- 耳介再建の最も理想的な3次元フレームの材料は自家肋軟骨であり、最も術後合併症が少ない。
- 耳介再建手術の適応条件は
(1)患者の年齢が10歳を超えている事。なおかつ
(2)剣状突起の高さでの胸囲が60cmを超えている事。 - 耳介再建手術の第1回目手術においては、3次元肋軟骨フレームを作成し皮下に移植し耳介再建を行う。第2回目手術において再建耳介の耳立て手術を行う。
- 第2回目の耳立て手術においては、耳介の後ろへ移植する半月状肋軟骨の厚さと、耳介の立つ角度、耳輪頂点から側頭部までの距離との3者間の関係を十分理解している事が重要。
- ローヘアーラインを伴う小耳症においては、第1回目手術においては、TPF(※1)を挙上し、頭皮分層皮膚を採取し、耳介部分に存在する毛根を切除して3次元肋軟骨フレームを移植、その上にTPFで被覆し頭皮分層皮膚を移植する事で、髪の毛が生えない色調の良好な耳介再建が可能となった。第2回目手術においては、DTF(※2)を挙上し、頭皮分層皮膚を採取し再建耳介を挙上して耳介後面に半月状の肋軟骨移植を行って再建耳介を立て、耳介後面からDTFで被覆し、頭皮分層皮膚を移植する事で血行の良好な耳介再建が可能となった。TPFやDTFの上に移植した頭皮分層皮膚は術後の収縮を起こさないで血行も良い特徴を有するため術後合併症が最も少ない方法である。永田法では、従来法では不可能だったローヘアーラインを伴う小耳症の諸問題もこうして解決した。
- 耳介再建において、従来法のように耳甲介部や、耳介後面のraw surface(※3)へ皮膚移植のみでの手技は、術後の収縮を起こし、再建耳介の輪郭が消失するばかりでなく血行も悪くなり術後の移植肋軟骨の吸収変形を起こすので、禁忌となる。同様に、耳を起こして肋軟骨移植により耳を立て、耳を起こした直下の軟部組織を挙上し、反転して移植肋軟骨を被覆する方法も上記と同様のraw surface なので、その上に植皮を行っても、術後長期において収縮を起こし移植肋軟骨の吸収変形の原因となるので禁忌となる。
(※1)TPF:浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)を含む血行が最も豊富な膜(浅側頭筋膜)
(※2)DTF:側頭部骨膜及び側頭筋筋膜へとつながる血行の良い組織
(※3)raw surface:創面、傷の表面
MRI検査について
永田式小耳症ワイヤーは、ステンレスでできています。
軟骨を組むときに、約80本、耳介挙上時に約20本使います。
以前は手術が終わったら、「MRI検査はできません」とお知らせしていました。
しかし、2017年9月に中国(北京)で行われた国際耳介再建学会で、興味深い発表がありました。
小耳症手術で使用されるスチール製スーチャー(永田式小耳症用ワイヤー含)を用いた実験結果で
結論:実験を実施したスチール製スーチャーは、3テスラまたはそれ以下のMRI設定(すなわち、MRI Conditional:条件付きでMRI可能)において、患者に対して付加的リスクを与えることはない。これらのスーチャーによるアーチファクトは、問題となることがあっても、再建された耳介のごく近くのみである。(抄録より一部抜粋)
と報告されました。
MRIを利用される場合は、担当の先生に小耳症用のワイヤーが100本近く入っていることを説明し、ご相談のうえでMRI検査を受けられるようお勧めします。
◆ブログ参考『小耳症術後にMRIを撮影しても大丈夫ですか?』
平成29年11月1日
耳介再建手術開始の条件
通常耳介再建の時期は肋軟骨のボリュームが十分に足りるようになり、強固な3次元肋軟骨フレームを作成するために10歳を超えてから手術を行う。また、10歳になると正常な耳介の長さが、ほぼ成人の長さとなる。以上の点から、耳介再建の手術条件は、
(1)10歳を超える事。なおかつ
(2)剣状突起の高さでの胸囲が少なくとも、60cmを超える事、が望まれる。
小耳症治療・永田法について
永田法による全耳介再建法は、患者さん自身の胸部から取り出した肋軟骨を立体的に組み上げて皮下に移植し、耳介の表を作る「第1ステージ」と、形成された耳介全体を立てる「第2ステージ」からなります。
また、手術の種類として、初めて耳介再建を受ける患者さんに対して行う通常の耳介再建手術の例(文中、症例1~7として紹介)の他に、一度他施設で手術を受けたものの、その結果について不満を持つ患者さんからの依頼に応じて行う耳介の再々建手術の例(文中、症例8~11として紹介)の大きく二つの種類があります。最近においては、特に二番目の「耳介の再々建手術」のケースが増加しています。
肋軟骨採取の切開線
剣状突起から肋軟骨の最下端縁までの高さの上から3分の1に相当する所に水平線の切開ラインを描く。その水平線は第7肋軟骨の下縁に位置する。水平線の長さは5cm。第1回目の手術で第6から第9肋軟骨を採取する。第2回目手術においては、第4と第5肋軟骨を採取する。
採取した肋軟骨
採取した肋軟骨。肋軟骨膜は剥離し採取部に全て残しているため採取した肋軟骨は白色となっている。採取した肋軟骨の形態は、症例により異なっている。短い切開線から肋軟骨を採取している。永田法による肋軟骨採取では術後胸郭変形を起こさないし、切開線の傷も最小限ですむ。
肋軟骨採取
皮膚と脂肪を切開し、脂肪の下を広く剥離し、外腹斜筋と腹直筋の筋膜を露出する「図1」。
外腹斜筋と腹直筋の間を切開し「図2」、肋間筋と第6から第9肋軟骨の肋軟骨膜を露出する「図3、4」。
肋軟骨膜の中央に線を引きメスで肋軟骨膜を切開し、肋軟骨膜剥離子「アッシュ5番」を用いて肋軟骨膜の表を剥離する「図5、6」。
さらに肋軟骨膜の裏側まで前周を剥離する「図7」。
第8番、第9番の肋軟骨を持ち、肋軟骨と肋骨のジャンクションのわずかに肋軟骨寄りに肋軟骨カッターで切開採取する「図8」。
第6番、第7番肋軟骨は時に両者が一体となり癒合付着している場合があり、そのような場合は一塊として同時に摘出する「図9」。
4本の肋軟骨を摘出した後、肋軟骨膜はすべて開いて残されている「図10」。開いた肋軟骨膜を中央部を一部除き4-0白ナイロンを用いて5mm間隔で縫合する「図11」。
3次元肋軟骨フレームを作成して残った肋軟骨を米粒大「2mmから3mm大」の大きさに、みじん切りにし、肋軟骨膜の中に満タンになるまで入れ戻す「図12、13」。
そして肋軟骨膜の縫合を全て行う「図14」。
その後、肋軟骨膜の中には自分の体液が貯留し、その中で新たに肋軟骨が再生されるので、永田法では、従来法のように肋軟骨採取後に胸郭陥凹変形が起きる事は無い。肋間神経にマーカインを注射して肋間神経ブロックを行い、筋体を縫合し創を閉鎖すると術後の痛みもほとんど無い「図15、16」。
最近では、術後の痛みを抑える薬剤の進歩が実現し、創閉鎖時にドレーンから薬液を入れるだけで、胸創部に浸潤させる事で肋間神経ブロックを行わなくても術後の痛みを十分抑える事ができるようになっている。
「胸の痛み・変形のない小耳症手術」を参照。
3次元肋軟骨フレームの作成
3次元肋軟骨フレーム作成のイラスト。
図C6, C7, C8およびC9:3次元肋軟骨フレーム作成のため、第6,7,8そして9番の肋軟骨を採取する。
図C:これは3次元肋軟骨フレームの中の耳甲介のパーツ。ベースフレームと耳珠のパーツを作成した後の余った肋軟骨で耳甲介のパーツを作成する。余った肋軟骨は、症例によりさまざまな大きさで、症例によっては耳甲介軟骨を2つのパーツに分けて作成せざるを得ない事もある。
図B:ベースフレームのパーツ作成;第6、第7肋軟骨を用いてベースフレームを作成する。
図T:耳珠のパーツは、ベースフレームのパーツを作成した後の最も大きな余った肋軟骨で作成する。
図H:これは、耳輪脚-耳輪のパーツで、第8番肋軟骨を用いて作成する。
図AH:第9番の肋軟骨を用いて上行脚、下行脚-対輪のパーツを作成する。
3次元肋軟骨フレーム固定
図1と2:強固でしっかりと緩みのないベースフレームのパーツを作成するため38ゲージの両端針ステンレスワイヤーを用いて固定する。
図3:作成したベースフレーム。
図4と5:耳輪脚-耳輪のパーツをベースフレームに固定する。耳輪脚の先端をベースフレーム中央の裏側に固定する。
ワイヤー固定は3mmおきに固定する。術後のワイヤー露出が起きないように、ワイヤーのループの部分をカットして、表に露出しないように肋軟骨の中に埋め込む。
図6:耳輪脚-耳輪のパーツをベースフレームに固定した所見。図7:上行脚、下行脚-対輪のパーツ。
図8:上行脚、下行脚-対輪のパーツをベースフレームに固定する。
図9:耳甲介のパーツ。
図10:耳珠のパーツ。
図11:上行脚、下行脚-対輪のパーツをベースフレームに固定した所見。
図12:耳珠、耳甲介のパーツをベースフレームに固定する。まず、耳珠の固定を行った後で、耳甲介の固定を行う。
図13:3次元肋軟骨フレームの斜め前方からのイラスト。
図14:3次元肋軟骨フレームの前面のイラスト。
図15:3次元肋軟骨フレームの実際。
図16:3次元肋軟骨フレームの後面のイラスト。
3次元肋軟骨フレームの作り方の実際
耳垂残存型小耳症の皮弁作成
第1回目手術・耳垂残存型小耳症
耳垂残存型小耳症の第1回目手術法。
図1:耳介を再建すべき場所を点線で示す。また、耳垂全面の切開線。
図2:耳垂後面から乳突胴部にかけてW型切開線をデザインする。W型切開線の末端は、耳介が存在すべき場所よりも外側に5mmのポイントで終焉する。
図3:4枚の皮弁形成を行う。すなわち、耳垂全面皮弁、耳垂後面皮弁、耳珠用全面皮弁、乳突洞部皮弁。
図4:遺残耳介軟骨は、すべて摘出する。外耳道部に位置する部位の軟部組織を切除して骨膜を露出させる。骨膜を半円形に切開してhinge flapとして下方に折り曲げて耳下腺の軟部組織に縫合し、露出した骨膜をburrで削り深くする。ただし、浅側頭動脈がこの部分に存在する症例の場合は、この操作は行えない。
図5:耳介が存在すべき大きさよりも外側1cmまで皮下剥離を行って皮下ポケットを作成する。
図6:耳垂後面皮弁と乳突洞部皮弁の間から点AとBまでを縫合すると陥凹皮弁が形成される。耳垂後面皮弁の直下の下半分と、それに連続する乳突洞部皮弁の一部は、剥離せずに皮下茎皮弁とする。この部分を皮下系皮弁として剥離せずに残すのは、血行上皮弁の安全のため必須でありこの手術のキーポイントでもある。
図A、B、CそしてD:3次元肋軟骨フレームを皮下ポケットへ挿入するには、イラストのように皮下茎部を中心に、フレームの耳珠部から回転させながら皮下ポケットの中へ挿入する。
図7:皮下ポケットの中に3次元肋軟骨フレームを挿入後の状態をイラストで示す。
図8:耳垂全面皮弁と耳珠用皮弁を後方へ移動して縫合する。また、スムーズなU字型の珠間切痕を形成するために、耳垂全面皮弁の茎上部を、半径2mmほど丸く切除して、U字型皮弁と縫合する。この際の注意点は、耳垂全面皮弁のdistal部分の壊死を起こさないようにするために、pedicle部の幅が8mm以上残るようにする。
皮弁縫合途中で、耳輪と対輪の間から皮下に18ゲージの点滴用外筒を挿入しsuction「吸引」を行い耳介全体の輪郭が浮かび上がったのを確認して、縫合を行う。
図9:耳輪前方で遺残耳介部の余った皮膚を切除する。血行の安全性のためには、できるだけ縫合線が水平に近い切除を行う。
図E、FそしてG:耳介輪郭の陥凹部から、耳輪外側周囲へ向かってボルスター縫合を行い、ロール状ガーゼにゲンタマイシン軟膏を十分に塗布し、ボルスター縫合固定を行う。
その後吸引チューブを抜去する。タンザー法やブレント法など従来法と異なり永田法では、3次元肋軟骨フレームを覆う皮膚の表面積が十分に広く用意されているので、皮弁に張力がかかることが無く、安全にボルスター縫合固定が行える。ただし、耳輪内側側のボルスターロール状ガーゼの直径は3ミリメートル程度に細くする。
図H:再建された耳介を保護するためにレストンスポンジをイラストのように丸く切り再建耳介の周囲に付着させる。
図I:ゲンタマイシン軟膏を再建耳介に塗布し、トレックスガーゼを乗せ、1枚の裁きガーゼをかぶせた上に、6枚のガーゼで、レストンスポンジを覆いテープで固定し、ネットをかぶせ顔面と反対の耳介を露出して手術を終了する。
第2回目手術:耳立て手術
第2回目手術:耳立て手術のイラスト。
図1:第2回目の耳立て手術の手術デザイン。頭皮分層皮膚を採取するためスピンドル型のデザインを行う。再建した耳を側頭部から立てるため耳輪周囲を切開する。TPFを挙上するため浅側頭動脈を含むように、また頭皮切開部が目立たなくするために、毛流を考慮したジグザグ切開を行う。
図2と3:側頭部皮膚を15番メスを用いて分層で採取する。
図4と5:耳介後部の側頭部より採取した頭皮分層皮膚。ジグザグ切開により皮弁を挙上してTPF表面を露出させる。図6:再建した耳介周囲より4mm外側で切開する。
図7:毛髪部は毛根を含まないように分層皮膚を耳輪の頂点まで挙上する。
図8:TPFを挙上する。
図9:再建した耳介を側頭部から剥離して挙上する。挙上の際には、再建した耳介後面に軟部組織を十分に付着させて肋軟骨フレームが露出する事が無いように注意する。
図11:側頭部の皮下を剥離する。
図12:TPFを耳介の直前から引き出し皮弁を縫合閉鎖する。
図13:耳介を後方から支えて立てるための肋軟骨ブロックを作成する。健側の耳介が通常の30度の角度で立っている場合は、移植する肋軟骨ブロックの厚さは14mm必要なので、少なくとも2本の肋軟骨を採取し、1本の肋軟骨で、広い半月状のベースフレームを作成し、残ったもう1本の肋軟骨を2ブロックに加工し、ベースフレームの上に別々に乗せて半月上になるように重ね、38ゲージのステンレスワイヤーで20か所ほどワイヤー固定する。作成した肋軟骨ブロックを下から見ると、イラストのように、逆Ⅼ字型となるように作成する。耳介が強固に安定して立った状態を永続的に保つため必要な形態となる。1本だけの肋軟骨ブロックを用いてこの形態を作ろうとしても厚さが7mmしか形成できず左右対称に立てることは絶対に不可能だ。
図14:作成した半月上肋軟骨ブロックは、4-0白ナイロンを用いて再建耳介後面と、側頭部乳突洞部の軟部組織に4mm間隔で密に縫合固定する。この時点で再建耳介が、グラグラとせずしっかりと立って動かない状態となった事を確認する。
図15:TPFで耳輪の頂点から再建耳介の後面さらに、耳介を挙上したことで陥凹している側頭部および乳突胴部までの全ての部分を被覆する。
図16:側頭部皮膚を矢印のごとく上からと下から引き寄せるように縫合して行き、毛髪内で余剰のドッグイヤー部を切除する。
図17:TPFの上に頭皮分層皮膚を移植する。
図18:タイオーバー固定を行って手術終了。
第2回目手術における肋軟骨ブロックの作成
第2回目の耳立て手術において、再建した耳介の後ろに耳介を支えて立てるための半月状の肋軟骨ブロックを作成する。両側小耳症においては再建耳介と同側の第4、第5肋軟骨を採取して肋軟骨ブロック作成の材料とする。片側小耳症では、反対側の第6、第7肋軟骨を用いても良い。肋軟骨ブロックの作成は、ベースフレームの上に2個の肋軟骨を重ねて厚さ14mmとして作成する「図1」。設計図に描いている半月状の部分「図3」からその部分を切り取り、紙型を作成する「図2-P」。型紙を採取した肋軟骨の上にのせて型紙と同じ大きさのベースフレームを作成する「図2-B」。ベースフレームの上に肋軟骨ブロックの一つを重ねて38ゲージステンレスワイヤーで固定する「図4、5」。さらにもう1つの肋軟骨を重ね、同様にワイヤー固定を行って肋軟骨ブロックが完成する「図6、7、8、9」。肋軟骨ブロックのイラスト「図6」。肋軟骨ブロックを斜め前方から見た所見「図7」。真横からの所見「図8」。斜め後方からの所見「図9」。ワイヤー固定数は計20針。
耳介再建法の歴史
タンザー法、ブレント法、永田法の比較表
タンザー法(Tanzer) | ブレント法(Brent) | 永田法(Nagata) | |
手術回数 | 6回 | 4回 | 2回 |
手術時間 1回目 | 1時間 耳たぶ移動 |
3時間 肋軟骨移植 |
8時間 肋軟骨移植 |
手術時間 2回目 | 3時間 肋軟骨移植 |
1時間 耳たぶ移動 |
8時間 耳立て術 |
手術時間 3回目 | 2時間 耳珠形成 |
2時間 耳珠形成 |
- |
手術時間 4回目 | 2時間 耳分離 |
2時間 耳分離 |
- |
手術時間 5回目 | 1時間 対輪後に穴作 |
- | - |
手術時間 6回目 | 2時間 穴ふさぎ |
- | - |
肋軟骨採取本数 | 3本 | 3本 | 4本(1回目) 2本(2回目) 計6本 |
再建耳介の立ち方 | 立たない | 立たない | 30度の角度で左右対称に立つ |
胸郭変形 | 有 | 有 | 無 |
長期に肋軟骨が吸収されて耳が萎縮変形を起こす | 再建耳介の血行が不足するので移植肋軟骨が融けて長期経過後に萎縮変形を起こす | 再建耳介の血行が不足するので移植肋軟骨が融けて長期経過後に萎縮変形を起こす | 移植肋軟骨は血行がよいので萎縮変形を起こさない |
ワイヤー固定 肋軟骨フレーム |
5針 |
5針 |
1回目85針 2回目20針 計105針 |
米国の形成外科であるタンザー(Tanzer)によって患者さん自身の肋軟骨を用いた耳介再建方法が報告されて以降、肋軟骨を用いた多くの種類の術式が開発されてきました。それらは、主に「耳介の再建までに必要とされる手術の回数」並びに「再建された耳介の形状」とから分類されますが、代表的なものとして、タンザー法、ブレント(Brent)法、そして私自身の開発による永田法とが挙げられます。
各方法の特徴として、まず最終的に必要となる手術回数について、通常の例で、タンザー法では6回、ブレント法では4回の手術が必要なのに対し、永田法では2回となっています。また再建される耳介の形状に関しては、タンザー法並びにブレント法では、米国の著名な形成外科医であるトーレス(頭部全体の形と耳の形との位置関係や頭部全体の中における耳の位置との関連性について解剖学的に分析を行った)の論文において述べられているような、解剖学的に計算される本来あるべき耳介の位置ほどには耳介が立っておらず(耳介再建では、まず耳介の形を作った上で、耳介全体を立たせる手術を行う)、その結果は不完全なものと言わざるを得ませんでした。
そのため、これらの問題を解決し、より本来あるべき耳介の形状を正確に再現できるような新しい方法が開発される必要がありました。永田法はこのような背景から開発された二段階の全耳介再建法であり、1985年に最初の手術を行って以来、現在までに2,000症例以上を行っております。他の術式との比較でも明らかなように、永田法は、手術の回数が少なくて済みかつ再建された耳介の形状が良いことなどから、現在では、米国の形成外科用の教科書に永田法が掲載されるなど小耳症に対する世界的に標準の術式となっています。
小耳症タイプ別一覧
通常の耳介再建手術の例
過去に耳介再建手術を受けたことがない患者さんに対して行われる通常の耳介再建手術は、年齢としては10歳以上でかつ胸囲が60cmより大きいことが必要条件です(肋軟骨の大きさが、手術を行うのに十分であるかどうかが予めレントゲンで確認される必要があります)。永田法では、小耳症に関し、その程度に応じて以下のタイプに分類しています。
このサイトの写真は小耳症治療をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。
小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺、浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良、感染、移植軟骨の露出、気胸、術後肺炎、縫合不全、ハゲ、床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。
さらに、これらのタイプ分けとは別に、小耳症の場合には、頭髪の生え際が通常のケースと比較して低くなる頭髪低位(Low Hair Line)のケースがあります。 永田法以前の方法では、頭髪低位に対しては、(1)頭髪の生え際を避けるために本来あるべき耳介の位置に対して耳介の位置をずらして作るか、または(2)頭髪部分にそのまま耳介を作るために耳介上の皮膚から発毛してしまうか、のいずれかの方法しかありませんでした。永田法ではこれらの問題を解決し、頭髪低位であっても自然な耳介を再建することが可能となっています。
耳介の再々建手術
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小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺、浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良、感染、移植軟骨の露出、気胸、術後肺炎、縫合不全、ハゲ、床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
埋没耳の手術
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耳介形成術による合併症
感染、縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
スタール耳
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耳介形成術による合併症
感染、縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
折れ耳
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耳介形成術による合併症
感染、縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
カップ耳
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耳介形成術による合併症
感染、縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
ロップ耳
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耳介形成術による合併症
感染、縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。 場合によっては再手術を行う可能性もあります。
外傷性耳介欠損の耳介再建術
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外傷性耳介欠損手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺、浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良、感染、移植軟骨の露出、気胸、術後肺炎、縫合不全、ハゲ、床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。