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無耳症あるいは臨床的無耳症
先天的に耳介が全く存在しない状態を無耳症と言う。あるいは、無耳症にさらに小さな耳垂や副耳が存在していたとしても、再建すべき場所から遥か遠くに耳垂や副耳が存在している場合、その耳垂や副耳は再建すべき場所に全く届かないので、切除するしかない。切除すると何も存在しなくなるので臨床的には無耳症と同じ状態となる。このような症例を臨床的無耳症と呼ぶ。 無耳症、あるいは臨床的な無耳症は、耳介が全く存在せず皮膚の表面積が不足するため、従来法の小耳症手術では耳介再建が不可能と言われていた。さらに無耳症にローヘアーラインを合併すると、ますます耳介再建は不可能と言われてきた分野だった。が、永田法では、無耳症に対しても、毛根切除後3次元肋軟骨移植さらにTPF被覆その上に頭皮分層皮膚「UDSTS」移植を行う事で、これらの困難な諸問題をも解決し、正常な場所に耳介再建を行うことが可能となった。
頭髪低位の中でも生え際が極めて低く、従って術式が非常に複雑となる例
手術前
第1ステージ手術前
デザイン(耳が存在すべき所に
髪がはえている)
第2ステージ手術後
第2ステージ手術後
■手術前 :
無耳症(anotia)の場合、一般に頭髪の生え際が低いケースが多く従って術式が複雑となる場合が多くなります。特にこの写真のケースのように生え際が極めて低い位置にある場合、より複雑な手順が必要となります。
■第1ステージ手術中 :
施術対象範囲(耳介となる予定の範囲)の約75%が頭髪部分であることがわかります。
■第2ステージ手術後 :
再建された耳介に発毛は全く見られません。このケースのように無耳症で頭髪の生え際が低いケースであっても良好な結果が得られます。
第1回目手術・3次元肋軟骨フレームの作成
図1:小耳症と同側の第6、7、8そして9番の肋軟骨を採取する。図2:採取した4本の肋軟骨。これらの肋軟骨から、メスと彫刻刀を用いて耳珠、ベースフレーム、耳輪脚と耳輪、上行脚と下行脚および対輪、を作成する。ベースフレームは、第6、第7番の肋軟骨から2個のパーツを作成し、38ゲージステンレスワイヤーを用いて6か所固定し作成する。図3:ベースフレームに第8番肋軟骨から作成した耳輪脚、耳輪のパーツの耳輪脚先端をベースフレーム8の中央で裏側に38ゲージワイヤーで2か所固定する。図4:耳輪の部分をベースフレームの上に乗せて、曲げながら3mmおきにワイヤー固定する。図5:上行脚、下行脚、対輪のパーツをベースフレームにワイヤー固定する。図6:耳珠のパーツをベースフレームに固定する。図7:耳甲介部をベースフレームの裏側にワイヤー固定すると3次元肋軟骨フレームが完成する。
ローヘアーラインを伴う臨床的無耳症の第1回目手術
ローヘアーラインを伴う臨床的無耳症の術前の状態「図A」。手術デザイン「図B、C」。耳介が存在すべき場所に髪の毛が70%を超える部分に生えている超ローヘアーラインの状態。耳介が存在すべき場所の外側周囲15から20 mm外側を切開し、頭皮分層皮膚を採取する「図C、D」。耳介が存在すべき場所の毛根部を切除する「図E」。毛根を切除した部分に3次元肋軟骨フレームを移植しその上をTPFで被覆する「図F、G、H」。3次元肋軟骨フレームをTPFで被覆した部分に頭皮分層皮膚を移植する「図I」。最後にボルスター固定を行う「図J」。
ローヘアーラインを伴う臨床的無耳症の第2回目手術
第1回目手術で、すでにTPFを使用しているので、耳介の後面を被覆するためにDTFを使用する。術前の状態「図A」。手術デザイン、前回の切開線と同じ切開を行いDTFを挙上する「図B」。もともとあった耳介に届かない場所の後方に残った副耳を切除する。又、耳介周囲を切開する「図C」。DTFを挙上する。頭皮分層皮膚を採取する「図D」。耳介後面を剥離して耳を立てさらに側頭部皮下を剥離する「図E」。耳介後面に新たに作成した厚さ14 mmの半月状の肋軟骨ブロックを移植し縫合し、耳を後方から支えて耳介を30度の角度に立てる「図F」。耳輪、耳介後面、半月状移植肋軟骨、側頭部、乳突洞部を広くDTFで被覆する。又、側頭部、乳突洞部皮膚を縫合縮小する「図G」。DTF部分に頭皮分層皮膚を移植する「図H、I」。最後にタイオーバー固定を行う。
◆2015/2/10 「ローヘアーラインを伴う臨床的無耳症の肋軟骨移植術」はコチラ